橿原ミグランス疑惑 何してる亀田市長 - 論説委員 甘利 治夫
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橿原市の分庁舎ミグランスに併設したホテルをめぐり、数々の問題が浮き彫りになってきた。同ホテルが「厳しい財政を圧迫している」と指摘している亀田忠彦市長の本気度を問いたい。スピード感をもって自らが対応し、10月の選挙前の任期中に結果を出すのが筋ではないか。
5年前に、近鉄八木駅南側の1等地にホテルを併設した10階建て分庁舎が建設された。5〜9階に客室数約130室のカンデオホテルズ奈良橿原(本社・東京)が開業した。
民業圧迫を懸念する声が当初から上がったが、当時市長だった森下豊氏によれば「駅前のにぎわい創出、地域活性化を目的とする」としていたという。実際はどうだったか。市役所業務は土日祝日が休みで、平日も5時過ぎに終了なので1〜3階部分が真っ暗となる。にぎわいの効果に疑問符がつき、ホテルの宿泊客が駅周辺でどこまで買い物をしてきたか。
そのこととともに、同ホテルへの極端な優遇対応が浮き彫りになっている。
市有の建物なので、その賃料について、当初、議会特別委で「年間賃料は9500万円で考えている」と説明されていた。しかし実際の賃料は半額以下の約4000万円に大幅減額されており、議論された議事録を基に、論理的な説明が求められよう。
また建築費は、分庁舎分が約40億円、併設ホテル分が約15億円とされているが、建物本体の基礎工事にかかった費用負担を案分すれば、「ホテル分は約20億円かかっているはず」といわれている。契約をみると、原則として途中解約できない20年間の「定期借家契約」となっている。このため20年間の賃料合計は約8億円となり、建築費用の半分にもならない。しかも、市の建物なので固定資産税はゼロに等しく、東京が本社なので法人税もなく、周辺の業者らをあ然とさせている。試算によれば固定資産税収入は年間数千万円が見込めるという。「費用対効果」を無視した、ホテルを優遇した実態が明らかになっている。
亀田市長に言いたい。調査委発足を表明して1カ月なのに、まだ会合が開かれていないのはどういうことか。委員の構成メンバーも庁内だけでは、当時の議論に加わった関係者もいるかもしれないので、利害のない第三者が望ましい。
刑事訴訟法239条2項の告発義務を考えるなら、少なくとも亀田市長は、スピード感をもって、任期中に告発すべきではないか。