漫画「はだしのゲン」は作者の広島での被…
漫画「はだしのゲン」は作者の広島での被爆体験を描いたもので、一つの「ヒロシマの象徴」。海外にも知られた作品である。
それを地元の市教委が、市立の小中高校を対象にした「平和教育プログラム」の教材から削除する方針を決めたという。時代に即した学習は必要だろうが、時代背景の説明がしにくいといった理由ならば、それは責任放棄にしか見えない。
さらに米国のビキニ水爆実験で被ばくした静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の記述もなくすことが1日、分かった。米大統領の来日を控え、忖度(そんたく)とやらの力学が働いたというのは勘ぐりすぎか。
市教委によると「第五福竜丸が被ばくした記述のみにとどまり、被爆の実相を確実に継承する学習内容となっていない」との指摘が出て、23年度からの改訂版は世界の核実験、核軍縮の動きを表やグラフから具体的に捉えられる内容に変更するそうだ。
市民が受けた心や体の「痛み」を伝えるのが先で、世界の現状を知るのは次の段階ではないか。
どんな分野でも「継承」の問題は、実に悩ましい今日的課題だ。(恵)