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風流踊の無形文化遺産登録 人をつなぐ支援を - 編集委員 高瀬 法義

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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、「十津川の大踊」(十津川村)をはじめ、盆踊りなどとして伝承されてきた24都府県41件の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。28日から12月3日までモロッコで開かれるユネスコ政府間委員会で、勧告通り登録が正式決定する見通しだ。

 

 風流踊は華やかな衣装をまとい、太鼓や笛のはやし、歌に合わせて踊るのが共通の特徴。県内から選ばれた十津川の大踊は毎年8月13~15日の夜、先祖供養のために村内3地区で営まれている。無形文化遺産登録が実現すれば、県内の民俗行事では題目立(奈良市上深川町)に次いで2例目となる。

 

 建築物や美術工芸品などの有形文化財は適切な管理を行えば保存できる。が、無形の民俗文化財は、担い手や技術保持者ら「人」がいなくなれば簡単に消滅してしまう。実際に近年、少子高齢化の後継者不足のほか、コロナ禍の影響もあり、消滅する民俗行事が増えている。今回の無形文化遺産登録は十津川の大踊に限らず県内民俗行事の保存伝承を担う関係者の励みになるだろう。

 

 しかし、登録が実現すれば、保存伝承に向けた課題がすべて解決するわけではない。保存伝承には地域住民の情熱と努力に頼る部分が大きいが、それだけでは限界がある。行政や学会、社会の多角的な支援が必要だ。

 

 その一つが民俗行事の記録作業だ。もし、現在の世代で後継者がいなくなっても、映像や詳細な記録が残っていれば将来に復活できる可能性がある。県も以前から記録作業に取り組むほか、十津川でも文化庁の支援で大踊の映像を撮影して公開している。

 

 また、地域の学校などでの郷土学習を通じた後継者育成も大切だ。さらに、地域外からボランティアを募り、担い手を育てるという方法も考えられる。

 

 ただ、忘れてはいけないのは、第一義的に民俗行事が地域の人々の宝だということだ。育んできた歴史や文化、抱える課題なども地域によって違い、頭ごなしに画一的な支援を行っても意味がなく、かえって担い手たちの反発を招く恐れもある。

 

 まず、担い手たちから地域の課題などを聞いて支援のニーズを捉え、必要に応じて地域外の人材を活用する。民俗行事が人によって成り立つ文化である以上、地域内あるいは地域内外の人と人をつなぐ支援が必要ではないか。

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