金曜時評

崩壊防ぐ施策転換 - 論説委員 松井 重宏

 新型コロナウイルス対策で県が維持してきた「自宅療養ゼロ」の施策が4月以降の「第4波」により事実上、崩壊。他府県と同様に県内も自宅療養者対応が重要な課題に浮上してきている。

 4月27日の県対策本部会議に示された数字によると、4月1日から同23日までに県内で確認された新規感染者は1829人。このうち23日現在で待機している人が271人(14・8%)、既に入院、入所した人が1059人(57・9%)。そして入院拒否者ら22人を除く477人(26・1%)が3日以上たっても入院、入所できていない陽性者で、うち134人(7・3%)は治癒済み、残る343人が23日時点の「自宅療養者」と報告された。

 23日時点の待機中と療養中を合わせた人数は、全体の3分の1を超える641人。その後も数字は高止まりが続いており、大型連休最終日の5月5日は452人、6日も426人となっている。

 県は自宅待機・療養者を対象に、自分で血中酸素飽和度を計測できる機器を貸し出すほか、看護師による電話相談窓口の設置などの取り組みを開始。新たな病床、宿泊施設の確保で、自宅待機をなくす努力は続けるとしているが、当面は「自宅待機中の死亡ゼロ」が何より重要な目標になる。

 そこで期待されるのが、自宅療養者の容態急変に備える臨時の応急医療施設。救急搬送が円滑にいかない場合、同施設で患者を一時的に受け入れ、その後に専用医療機関が見つかれば移送する。ただ県は「大型連休中も含め、通常の救急搬送体制が正常に機能しており、今すぐ設置しても医師、看護師らの負担を増やすだけ」として、現在は「設置に備えて状況を見ている」状態だと説明、臨機応変の姿勢を見せる。

 とはいえ自宅待機・療養者の救急搬送は既に4月1~25日の間に44件発生しており、奈良市内では4月25日までにコロナ関連の「救急搬送困難事案」が14件あったとする報告もあり、現場との温度差は否めない。

 県は、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の適用を国に求めず、独自の緊急対処措置を提示。引き続き、統計に基づく効果的な対応を県民に呼び掛けるが、施策の柱に据えてきた「自宅待機ゼロ」の崩壊を踏まえ、新たな取り組みへ転換を図らなければ。重症対応病床は6日時点で空きベッドが、わずか3床までひっ迫。連休明けの動向次第で、次は「医療崩壊」が現実味を帯びる。

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