金曜時評

令和の行く手占う - 主筆 甘利 治夫

 論戦は深まったか。

 令和初の国政選挙となった参院選も最終盤を迎え、県選挙区の3人の立候補者は、吉野郡の山間部をはじめ県内をくまなく回り、政策を丁寧に訴えてきた。しかしながら、有権者の反応は今一つのようだ。候補者に向かって手を振り握手を求める人もいるが、素通りする人の方が多い。期日前投票は堅調なようだが、必ず投票に行く人が、早めに済ましているとみられ、最終の投票率が気になるところだ。

 参院議員は、解散のある衆院議員と違い、任期は6年という長期の身分が保障されている。それだけに、いつ選挙があるか分からないといった心配もなく、国の将来に向けた仕事にじっくり取り組むことができる。

 今度の選挙で争点の一つになっている年金や社会保障制度などは最もふさわしい仕事といえる。本格的な少子高齢化時代に突入し、誰もが自身の問題と捉えているからだ。金融庁の「公的年金だけでは2000万円足りない」という報告書が出て、衝撃を受けた。庶民感覚からすれば「2000万円」という金額がいかに巨額であるかが、官僚の皆さんには分からないのだろう。2000万円近くの年収がある国会議員でも分からないかもしれない。

 今の年金受給者でさえ満足していないのに、若者にとっては将来への不安は増すばかりだ。数年後には、あの団塊の世代も後期高齢者となることから、高齢者も不安で仕方がない。そんな不安にどう向き合い、答えてきたかだ。

 県選挙区は、現職の自民党公認候補に対し、女性の無所属新人が野党統一候補となったことで、実質的に与野党対決選挙となった。1人区の勝敗は政権基盤を揺るがす。最終盤に入り激しさを増してきた。

 かつて「政権交代」によって、民主党政権が誕生し、その後の経過を有権者は見てきた。それだけに、与党の政策批判に賛同しても対案はどうかという目を養いもした。いわゆる55年体制といわれた、反対のための反対とみられるような当時の社会党のことも覚えている。反対するなら、実行可能な対案を示すことを、有権者は求めている。時に風によって勝敗が決まることもあった。

 現職であれ新人であれ、候補者の訴えに、ごまかしがないか。比例代表では、言葉のみでなく政党の実行力を見ていきたい。令和の時代の行く手を占う選挙であることを忘れてはなるまい。

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