金曜時評

己利己略の分裂劇 - 主筆 甘利 治夫

 政権与党の民主党が分裂、元代表の小沢一郎氏らが離党して新党「国民の生活が第一」(略称・生活)をスタートさせた。これには県選出の中村哲治参院議員も合流している。その後も離党者が続き、党員資格停止処分された元代表の鳩山由紀夫氏も、党内にとどまりながら、執行部批判の言動を行い、激震は収まりそうもない。

 政党は、志を同じくする人たちが結集したはずだ。党の政策や方針に合わないなら、党を離れるしかない。先の消費税増税法案の衆院採決で反対票を投じていながら、党にとどまっているのは、何とも国民には分かりづらい。

 この国の形をどうするか。国民の生命をどのように守り、暮らしを豊かにしていくのか。それが政治家や政党に課せられた責任だ。

 3年前、時の自公政権に対する「政権交代」という大きなうねりがあった。これを国民が選択し支持した。どのような国にするかよりも、「政権交代」そのものが目的になっていなかったか。民主党は、国民にマニフェスト(政権公約)を約束した。しかし、いざ政権を握ってみれば、「ばらまき」と批判されたように、予算の裏付けのないものが多かった。今や野党の自民党などから指摘されているように、マニフェストの誤りを国民に説明すべきだ。あの「子ども手当」にせよ、「高速道路の無料化」にせよ、どこへ行ってしまったか。国民は忘れてはいない。

 そのマニフェストを守れ、というのが小沢氏らの新党だ。結党の原点に帰ることは大事だが、政権交代を果たした今の民主党が、何を問われているかが見えないのか。共同通信社の世論調査でも、小沢新党に「期待しない」が80%を超えている。次の総選挙で国民が審判を下すことになるが、小沢新党は衆院勢力で第3党にあり、その存在感は大きい。小沢戦略をしっかり見ておかねばなるまい。

 国政が緊迫の度を深めるなか、今秋にも衆院解散・総選挙が予想され、来夏には参院選がある。政権交代を果たした民主党がどうなるのか。また政権奪還を目指す自民党はどうか。そして大阪維新の会を軸にした新党による政界再編の動きが一段と加速されよう。

 55年体制崩壊後に、政党・会派の離合集散が繰り返されてきた。郵政選挙の小泉旋風や政権交代の民主旋風などを経験してきたが、期待が大きかっただけに、国民の期待とは違ったものになった。その既成政党に対する失望から地域政党が続々と誕生し、社会情勢や国民の意識も複雑になっている。

 国民の期待に応える本物の政党・会派の出現が待たれている。言葉だけの政治家や、できもしない政策を訴える政党は、もうごめんだ。

 中央の動きは、そのまま選挙区のある地方の問題でもある。小選挙区制度のなかで、2大政党の民主党と自民党の責任は大きい。地方の選挙結果が、そのまま国政に直結するからだ。

 こうしたなか、県議会で新たな動きがあった。3会派に分裂していた自民党だが、「自民党改革」(5人)に「自民党未来」(3人)が合流した。本家の「自民党」(12人)への復帰は実現していない。2会派が本家への復帰の姿勢をみせてきたが、これを受け入れないと言う図式だ。

 最大会派の自民党からすれば、両派は「勝手に飛び出していった」ものだ。とくに役員改選をめぐる駆け引きから、分裂した経緯がある。今回も6月議会の前に合流話が出たが、分裂時の経緯が障害となった。

 総選挙が近いといわれるなかで、民主党が低迷しているのに支持率が一向に上がらない自民党がどうまとまるか。県議団が党県連を伝統的に引っ張ってきただけに、いつまでもこのままでいいはずがない。

 今度の民主党の分裂劇もそうだが、どんなに「言い分」が立派でも、次の選挙を意識した「己利己略」としか見えない。

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